【動画紹介】観光ラベル~認証制度の舞台裏~

フランス国営テレビのフランス2で1990年から放送されている「アンヴォワイエ・スペシアル(Envoyé spécial)」は、毎回ある1つのテーマを様々な角度から検証するテレビ番組です。今回は「フランスの最も美しい村」をはじめとする観光認証制度について特集がありましたので紹介したいと思います。

▼動画は下記サイトよりご確認ください。

VIDEO: Envoyé spécial. Labels touristiques, les revers de la médaille

【概要】

「花の街」、「グルメの街」、「ファミーユ・プリュス」…、これらの呼称はどのように付与されているのだろうか?サン・ジャン・ピエ・ド・ポーから、ラ・フロット・アン・レに至るまで、観光認証制度の舞台裏をフランス2のテレビ番組『アンヴォワイエ・スペシアル』が調査した。

村の入口には「フランスの最も美しい村」、「花の村」、「グルメの街」、「ファミーユ・プリュス」といったラベルが至る所に掲げられている。こうした認証は、フランス国内に30種類以上存在している。バカンスの間にそれらの看板が掲げられた村を訪れれば、心が休まることだろう。しかしながら、認証された街・村のほとんどは実はあまり知られていない。なぜ自治体は、それらラベルを勝ち取るために一生懸命になっているのだろうか?審査の基準は何に基づいているのだろうか?それらのラベルを信頼して良いのだろうか?

【要求される基準】

「フランスの最も美しい村」に加盟していることを掲げるために、例えば1988年に加盟が認められたシャラント・マリティーム県の魅力ある小さな港街ラ・フロット・アン・レでは、数多くの努力を必要とした。まず初めに住民は、指定された建築物の色に従わなければならない。民家の外観はこのラベルを得るための最も重要な基準なので、村長自ら確かめる。そしてこのラベルは、村民にとっても利益のあるものである。平均して、この村の民家は隣接する村の家屋に比べて25%ほど価値が高いのだ。

観光ラベルの舞台裏を調査するため、この番組では同じくサン・ジャン・ピエ・ド・ポー、サン・フロレ、プルマナックへと足を運んでいる。

2016年7月21日放送

【様々な観光ラベル|00分00秒~】

ムニエさん:「どうぞ、先に進んでください。」

南仏のとある場所、ガイドのムニエさんが得意とする日本語で村の説明を行っている。

ムニエさん:「もう少しすると、素晴らしい景観が私たちを待っています。」

案内を依頼した森本さんは、南フランスにある美しい村々を訪れるため2日間の滞在をしている。最初の目的地、タルヌ県のコルド・シュル・シエルに到着した。

ムニエさん:「ほら、見てください。普通ピースサインは勝利の意味ですが、日本人の場合は満足の証なんです。」
ムニエさん:「あそこの一番高い所にある四角い建物が教会です。」

森本さんは、ある物を求めてこの旅行を計画した。彼は完璧な美しさを探求しているのだ。

森本さん:「目の前で見ている光景は、まるで絵葉書のようです。美しい村に惹かれてきました。昨年はアルザス地方のコルマールや美しい村々を車で訪れました。」

二日間にわたって、この日本人家族は認証を受けた村だけを訪れた。コルド・シュル・シエルは、エコ・ツーリズムを推進する村に与えられる「スタシオン・ヴェール」の認証を受けている。

ムニエさん:「どうですか?気に入りましたか?」
森本さんの娘:「はい、完璧です。」

続いて訪れたのは、「フランスの最も美しい村」協会に加盟しているベルカステルコンクのように、「グラン・シット・ド・ミディ・ピレネー」(※ミディ・ピレネー地方の景勝地の意)に選ばれている村もある。

ガイドの奥様、のりこさんが今回の滞在をコーディネートした。なぜなら日本人観光客は村を訪れるとき、綺麗な鞄を買う時と同じようにブランドを好むからだ。

のりこさん:「もしラベルが無ければ、日本人にあまり知られることはありません。なぜなら、とても遠い所に住んでいるからです。フランスまで来たからには、間違いなく美しいものを求めているのです。」

日本人の観光客は地球を横断して、認証を受けた村々に足を運んだ。

 

もちろんフランス人も、バカンスの途中で認証を受けた村々を訪れる。

観光客の女性:「フランスの最も美しい村の看板を見ると興味を惹かれ、加盟した村に到着すると基本的にがっかりすることはありません。
観光客の男性:「オーセンティック(本物)であること、歴史性、修復の状況など基準に従っての選別がしっかり行われていると思います。」

フランスには数十の観光ラベルが存在している。高い評価を得ている認証も数多くある一方で、中にはしっかりとした努力が行われていないものもある。

認証を受けた村は約40%以上も多くの観光客を惹きつける。自治体の中には、勝ち取った証を掲げ、万全の準備が出来ている場所もある。ではそうした認証は、どんな基準によって加盟が認められているのだろうか?認証を勝ち取るために行う努力は、いつも割に合うものなのだろうか?

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バスク地方の中心に佇むサン・ジャン・ピエ・ド・ポーは、巡礼者のための宿場町だ。観光客に紛れた、散歩をしているかのような控えめな1人の男は、実は仕事のためにこの村を訪れている。「フランスの最も美しい村」協会の調査員パスカル・ベルナールさんだ。

ベルナールさん:「こんにちは、村長さん。パスカル・ベルナールです。」

大学で都市計画学を修了した彼は、この場所を審査のために訪れた。なぜならこの村が、「フランスの最も美しい村」のラベルを勝ち取るために応募をしてきたからだ。最初のステップは、村議会のメンバーとの面会である。まるで就職のための面接試験のようである。

ベルナールさん:「まずは迎え入れて頂きありがとうございます。早速始めたいと思いますが、皆様は「フランスの最も美しい村」協会に加盟するために応募をしてくださいましたね。すでに多くの観光客がこの村を訪れているにも関わらず、この協会に加盟したいと思う動機は何でしょうか?
村議会議員:「この「フランスの最も美しい村」というラベルは必要不可欠のようなものに思われます。あなたが仰ったように、この村は多くの人々が足を運んでくださいますが競争相手も多いのです。今の時代は、競合する場所と一線を画す必要があります。」
村長:「このラベルは、私たちの村に更なる価値をもたらすのです。
ベルナールさん:「では村長さん、次に村の案内をして頂けますでしょうか?」
村長:「ついに村の全容をお伝えできるのですね。」

サン・ジャン・ピエ・ド・ポーは、「最も美しい村」に加盟するための2つの条件を満たしている。人口2000人以下であること、および保護されている重要文化財/歴史記念物が2つ以上あることである。しかし、それだけでは全く十分とは言えない。パスカル・ベルナールさんは、目立たない場所にも目を光らせ、質問を投げかける。

ベルナールさん:「ここに通行禁止の標識がありますが、1年を通じてですか?」
村長:「はい、そうですよ。」
ベルナールさん:「もし私がこの村に住んでいたとしたら、どこに車を止めたら良いですか?」
村長:「向こう側です。」
ベルナールさん:「この配管は良くないですね。」

調査員は確かな観察眼で、村が加盟に値するかどうかを調べ上げる。

ベルナールさん:「訪れた人々は、そぞろ歩きを終えた後に、単に「ここは来た価値があった」、もしくは反対に「まぁ、酷くはなかったね」と言うだけで、細かな場所まで見ている訳ではないかもしれません。でも、私はすべてを見るようにしています。なぜなら、1つ1つの細かな部分が合わさることで色の統一感が生まれるからです。例えば、この郵便受けは異国の感じがするのですが、周囲と同じ色に塗られることによって周りと調和しています。」

少し緊張した面持ちで村長はパスカル・ベルナードさんに、村の見どころを説明する。村の紹介は、今のところ上手く行っているようだ。

ベルナールさん:「正直なところ、指摘すべき所はあまり多くないです。ほとんど欠点は無いと言って良いでしょう。」

村の一番高い場所に到着したところで、調査員は少し眉をひそめた。彼によれば、村の眺望は秩序立っていないため、とても優れているとは言えないそうだ。

ベルナールさん:「ここから見る自然風景は美しいと思います。しかし、スプロール現象(mitage)のために景観が乱されています。」
現地記者:「スプロール現象とはなんですか?」
ベルナールさん:「スプロール現象とは、建築を抑制すべき場所に民家が散らばって建てられることで、全体としてのまとまりが損なわれることです。これによって、この村の景観が平凡なものになってしまっています。」

パスカル・ベルナードさんは続いて、村の中心部の簡単な欠点を指摘する。村にある商店のショーウインドーの前に置かれた看板である。

ベルナールさん:「少し限度を超えた印象を受けます。押しつけがましく、目につきますね。」

しかし、旧市街から外へ出ると彼はより厄介な問題を発見した。

ベルナールさん:「ビデオで現状を撮影しています。この交通量の多さが、村の落ち着いた雰囲気を損ねています。これは、資格委員会の中で話し合わなければならない論点となるでしょう。」
現地記者:「このウィークポイントには気づいていましたか?」
村議会議員:「この欠点は認識しています。しかし、これが村の評価に際の決定的要因になるとは私には思えません。ただ私はここに住んでいるので、この光景に慣れすぎているだけかもしれませんが…。」

今回の現地視察と審査料として、サン・ジャン・ピエ・ド・ポーは「フランスの最も美しい村」協会に4,000€を支払っている。もしこの自治体が選ばれたならば、年間の負担金は5,000€になる。

ベルナールさん:「ありがとうございました。またお会いましょう。」

1カ月後にパスカル・ベルナールさんは、「フランスの最も美しい村」協会に加盟する9人の村長から構成される委員会の中でこの村の報告を行う。その場所で、村の加盟に関する最終決定がなされる。

ベルナールさん:「包み隠さず言うと、ここは本当に加盟に値する村だったと思います。ただし個人的には、留保付きの加盟になるのではと考えています。つまり、村の周辺部の都市計画と駐車場および交通量の管理に関する見直しを行うという条件下で村の加盟を認めるという事です。今のままでは、少し弱点が見受けられます。

▼サン・ジャン・ピエ・ド・ポーの詳しい紹介はこちらから

 

「最も美しい村」の認証を勝ち取る事は簡単ではないようだ。このラベルは1982年に、コレーズ県にあるコロンジュ・ラ・ルージュ村長により発案された。観光客を惹きつけるため、フランス中にある66の美しい村々が集結した。今日では、153の自治体(※2016年時点)がこのラベルを勝ち取ることに成功している。ラ・フロット・アン・レのように!

ラ・フロット・アン・レ|9分8秒~】

小さな港街は1988に「フランスの最も美しい村」協会への加盟が認められた。それ以来、人々の来訪は毎年増加している。現在では年に20万人以上が訪れ、加盟が認められた年と比べて2倍にも増えた。住民はその名誉にかけて村の景観保全に取り組んでいる。

ラ・フロットの住民ペシュローさんは、庭へ出入りする扉を塗ってもらったばかりだ。事業主と共に、仕事の出来栄えを確認している。

塗装業者:「これを見てください。景観条例によって定められた色を使っています。」

村のすべての住民と同様、ペシュローさんも村役場から提供される色見本の中から選ばなければならなかった。

現地記者:「これが、あなたが使うことを許された色ですか?」
ペシュローさん:「その通りです。私はヴェール・フイヤージュ(※生い茂った葉の緑の意)を選びました。比較的使われていない色です。」
塗装業者:「少し独創的な色ですよね。」
ペシュローさん:「そうです。統制された中での“独創性”ですけどね。」

いつものように、村内で民家の改修が行われた場合には、40年間にわたり村長を務めているレオン・ジャンドルさんがやってくる。規則に従って作業が行われたか、確かめに来るのだ。

村長:「改装工事は無事に終わりましたか?ヴェール・フイヤージュですね?問題ありません。」

毎朝、村長は村の中の見回りを行う。

村長:「見てください。これがイル・ド・レの伝統的な住居です。白い壁に緑色の雨戸、タール仕上げの黒いラインです。

村役場と地方の行政組織が、村の景観基準(Charte du village)を決めることが出来る。

村長:「この左の小さな家は、最近修復を終えたばかりです。素晴らしい出来です。(…)この家のファサード(外壁)は、防湿塗料が塗られていてとても美しいです。(…)見てください!この家の門は規則に従っていないのです。横縞になっています。」

村長は細部まで良く観察をしていて、景観に調和していない場所を指摘します。

村長:「この店のファサードは問題があります。少し議論の必要があるでしょう。」

村長にとって、この工房の店先は十分に手入れが行き届いていなかったようだ。芸術家であろうとなかろうと、持ち主としてのモラルが必要となる。

村長:「入口は変えなければならないでしょうね。緑色はそのままですが、特にプラスチック素材は使わないでください。黒色の帯も、もう一度塗り直す必要があるでしょうね。また、窓枠も補修が必要です。」
現地記者:「すべてしたら、大きな費用が掛かりませんか?」
アトリエの店主:「だから今日まで、修復をしてこなかったんです。でも仕方ないですね。やってみましょう。青銅の金具に変えるのですか?」
村長:「そうです。雨戸を取り付ける前に、青銅の金具を取り付けてください。こちらの扉も変える必要がありますよ。(…)」

危険がある場合を除いて、村長は住民の民家の外観について法的に罰することは出来ない。それでも、レオン・ジャンドル村長はどのようにすれば良いかを知っている。

村長:「私は数年前から、これらの修復の必要性について強く促してきましたよね?来年はこれらの改修があるものと考えてよろしいですか?」
アトリエの店主:「もちろんです。」

このように粘り強く議論を重ねることで、村内の修景は実を結んできた。たとえ補助金の支払いがなくても、ラ・フロットの住民は高い修繕費を支払うことを受け入れてきた。ただ、この修景によって笑みを浮かべているのは村長だけではない。ラベルを付与されたこの村の不動産の価値が高まっているのだ。

不動産屋:「この村は非常に手入れが行き届いていて、当然のことながらこの村の建築物は資産を持った人々を惹きつけており、それゆえ価格が上昇するのです。ラ・フロットのような「フランスの最も美しい村」協会に加盟している村は、近隣の町村に比べて25%程度価格が高騰する傾向があるのです。

1988年に「フランスの最も美しい村」への加盟が認められて以来、レオン・ジャンドル村長は実に200軒近い民家のリノベーションに成功してきた。

村長:「今日、「フランスの最も美しい村」協会へ加盟することは大変困難で、厳しい審査に合格しなければなりません。ただ資格の取り消しについて言えば、次の日であっても起こりうるでしょう。村長にとっては、いつ何時も用心深く目を光らせていなければなりません。」

【規制と個人の自由|13分36秒~】

たとえ村の歴史地区の外側にある木々に囲まれた小さな集落であっても、ラベルへの圧力は強く働いている。なぜならラ・フロットは「フランスの最も美しい村」協会に加盟している他に、自然保護地区にも指定されているからだ。この域内では、たとえ私有地であったとしてもキャンプが禁止されている。

ジェフレさんは40年以上前にこの土地を購入して、毎年この場所でバカンスを過ごしている。ただし、その権利はもう無いのだが。

現地記者:「皆様はここでキャンプをする権利を持っていないのではないですか?」
ジェフレさん:「私たちには権利があります。ご覧の通り、私たちは自宅にいます。他の人はここに来る権利がありませんし、あそこに車を止める権利もありません。それは権利の侵害です。他の人がキャンプをする権利もありません。もし誰かがここでバーベキューをしたいと思っても権利はありません。つまり、私たちの家で寝る権利が無いという事です。」
ジェフレさんの妻:「この美しい道で何をしましょうか?やっぱりペタングですよ。(…)、皆様は、私たちの家に来ているんですよ。」

こんな具合なので、毎年夏になると村の警察がやって来て家族の調書を作成している。

ジェフレさんの妻:「バゲットを買いに自転車で出かけたり、海辺に泳ぎに出かけたりする時に、私たちがしなければならないことを見せたいと思います。まず自動車の保険を隠さなければなりません。そうしなければ、番号を書き留められてしまいます。それと前回夫は、ナンバープレートを持っていかれそうになりました。とんでもないことですよ。」
ジェフレさんの家族:「子供の頃はどこでもスイカを食べていたものですよ。それが警察が侵略してきて…。悲しい事ですよ。」

このキャンプを楽しみたい人々によると、バカンスの在り方は村長が抱くイメージとは少し違っているそうだ。

ジェフレさん:「村長のポストカードの中では、私たちはそぐわない存在なのです。しかし商売を営む人々にとってのポストカードの中では、私たちは受け入れています。なぜなら村長が気にかけているのは、彼に投票してくれる支持者です。例えば、自由気ままな滞在を楽しむホテルの宿泊客などは邪魔でしかないのです。」

ラ・フロットの村長は、この件についてコメントすることを望まなかった。法に従い厳密に罰金を適用していくだけのようだ。

▼ラ・フロットの詳しい紹介はこちらから

【サン・フロレ|16分8秒~】

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しかし完璧に法律を適用することが、現実問題として観光認証を失うことに繋がるということは無いのだろうか?

これはオーヴェルニュの丘の上に佇むサン・フロレの住民が抱いている疑問だ。33年間「フランスの最も美しい村」協会に加盟していた。しかし昨年秋、マギ・ラガルド村長は良くない知らせが記された一通の郵便を受け取った。

村長:「現地調査の後に開かれた資格委員会での審査の結果(…)」
ナレーション:「資格委員会での審査の結果、加盟取り消しを通知する。

「フランスの最も美しい村」協会からサン・フロレの除名を通知する文書の中に記されていた判断基準の1つがこの道だ。

ナレーション:「村を横切る道が過度に都市化され、交通量が激しすぎる

しかし除名の1年前に、マギ・ラガルド村長はこの道を整備するための大規模な工事に着手していた。歩道を設置し、車道を交互通行とした。

村長:「私たちは歩道を設けるために最大限の努力をしましたが、この事は考慮されなかったのではないかと思います。現地調査が行われた際には、この歩道は残念ながらまだ完成しておらず、彼らは見ることが出来なかったのです。確かにそれは私たちの落ち度だったかも知れませんが、加盟してから努力してきたことを考えると加盟資格を剥奪されるとは思っても見ませんでした。

2008年からマギ・ラガルド村長は補助金を活用し、60万€もの資金を費やし村内の修景に取り組んできた。実に村の予算の約2倍にも及ぶ。

この広場には、「フランスの最も美しい村」協会が指摘した失敗例がある。この石畳の道が、十分に田舎風ではないのだという。

ナレーション:「教会周りの空間における修景が、あまりにも洗練されすぎている。
村長:「ここの石畳は円を描くように敷き詰められていますが、「フランスの最も美しい村」協会は直線的な石畳を望んでいました。でも15年ほど前にこの石畳を整備した際には、異論なく認められたんですよ。」

村役場には新たに石畳を整備する術は残されていなかった。

住民:「お金を出すのは村民の税金からで、「フランスの最も美しい村」協会が支出する訳ではないのです。」
村長:「フランス協会は、小さな自治体が予算を柔軟に使える訳ではないという事を十分に考慮に入れてないと思います。

サン・フロレが指摘された最後の欠点を見るためには、丘の上へと登って行く必要がある。この下に見える一軒の民家である。「フランスの最も美しい村」協会にとっては、美しい景観を損なっているのだそうだ。

ナレーション:「歴史地区の都市計画的特徴にそぐわない、現代的な住宅の存在。
住民:「歴史地区、すなわち中心市街地からはこの家は全く目に入りません。私たちにとっては、これは趣旨違いで謂れのない非難です。」

持ち主は正規の手続きを踏んでおり、この民家はフランスの建築物に関する景観規制に従って建てられている。伝統的な建築物群の保護が求められるサン・フロレのような村では、役人が定期的にチェックしに来るため、住民は後ろ指を指されることを恐れている。

住民の家主:「少し攻撃的すぎると思います。彼らはこの家が原因だと考えているようですが、私たちは建築の際に求められた基準に従っただけです。

【「フランスの最も美しい村」協会事務局|19分53秒~】

私たちはその答えを求めに、クレルモン・フェランにある「フランスの最も美しい村」協会事務局へと足を運んだ。装飾を見る限り美しい村協会の基準を満たしているようには見えないオフィスだが、この場所で再びパスカル・ベルナードさんに面会した。彼によれば、サン・フロレの問題は、もっと全般的なものなのだそう。

ベルナールさん:「問題はむしろ大きな建築物の美的な取り扱いにあります。例えばこの建物はセメント、空洞コンクリートブロックで改修されています。他にも、これは塗装の厚みが問題です。通常は、石の部分に軽く触れるように塗装しなければなりません。」

名高いラベルを掲げるための手入れが、村の建築物には十分に行き届いていなかったようだ。

ベルナールさん:「すべての民家が魅力的でなければなりません。私たちは「フランスで最も美しい“土地分配”の村」協会ではありませんし、「フランスで最も美しい“空洞コンクリートブロック壁”の村」協会でもありません。」
現地記者:「そうは言っても、古い民家のリノベーションには費用が掛かりますよね。」
ベルナールさん:「すべてのフランスの村が何かしらの問題を抱えています。例えば、住民の貧困問題。もちろん気にかけています。しかし私たちは「フランスの最も美しい村」協会なのです。どうすればより美しくなるのかを真剣に考えなければなりません。

【サン・サヴィニアン|20分57秒~】

「フランスの最も美しい村」協会はあまりに閉ざされすぎており、加盟する事はとても難しい。不合格となってしまった自治体の解決策は、基準を緩めた新しいラベルを発案することかもしれない。シャラント川沿いに佇むサン・サヴィニアンは、「フランスの最も美しい村」協会に加盟するため2度も立候補したことがある。しかし、村の入口に工場が建てられていたため、書類審査の段階で却下された。

村長:「この場所に工場を建てることは異常な事ではありません。私は理解していますし、それを受け入れます。」

結果として5年前に、ジャン=クロード・ゴディノ村長は打開策を見つけ出した。自身の村および近隣の村を評価するために適したラベルを創造したのである。「石と水の村」と命名した。

村長:「この村の民家の美しさは石と水から構成されており、この2つの密接な調和を見て取ることが出来ます。石造りの民家が水面へと映される。それが「石と水の村」の由来です。」

シャラント・マリティーム県にある13の村々が「石と水の村」の認証を受けている。ラベルの目的はシンプルで、人が押し寄せる海辺の観光客を内陸部へと惹きつけることである。すでに海水浴場として有名な村と、サン・サヴィニアンのように少し奥まった場所に佇む村が加盟する。

村長:「もし知ってもらいたいのであれば、売り込まなければなりません。ポストカードが必要ですし、ネットワークの中で活動することが大切です。多数で発信をしていくのです。単独ではとても難しい事なのです。

5年前から村への訪問客数は20%増加した。しかし、「石と水の村」の認証だけで村のすべての魅力を伝えることは難しいようだ。この村には、まだ新しいラベルを生み出す余地が残されている。

村長:「これが照明装置となって、道を照らします。」
現地記者:「これも「石と水の村」の認証の一部ですか?」
村長:「これは違います。必要であれば新しいラベルを考えなければなりません。「光の村」なんてどうでしょう。」

そして、これが最新のアイデアだ。

村長:「今は「芸術の村」というラベルを作ろうかと考えているんです。」

「芸術の村」と呼ばれる自治体はフランス中に存在している。それを認証制度に変えるだけで十分なのだ。最近廃業した肉屋は、アーティストのギャラリーへと姿を変えた。

村長:「色々とアイデアを練り上げた結果、芸術家の作品を展示するのに役立てることにしました。」

この村の秘密を少し紹介すると、ジャン=クロード・ゴディノ村長自身が魔法の力を生み出すことに余念がないのだ。

村長:「これが「豊穣の岩」です。伝説に従えば、石切り場(carrière)の下で仕事のキャリア(carrière)を考えるんです。ここは「豊穣の岩」ですから、金銭運に恵まれるようになります。本当のことを言えば、これは作り話に過ぎないのですが上手く行っています。なぜなら多くの観光客がこの「豊穣の岩」へと足を運んでいるのですから。」

次の村はクリエイティビティでは劣りますが、数多くの観光客が押し寄せています。テレビ番組のおかげで!

【プルマナック|23分50秒~】

Photoed by bertomic – pixabay.com

「フランス人が選ぶお気に入りの村」は、まるで観光の認証制度のようだ。しかし、これはテレビ番組のコンクールであり、基準も調査員もいない。その代わりに毎年テレビの視聴者が、バカンスを過ごしたいと思うお気に入りの場所を選ぶのだ。

ステファン・ベルンさん(司会者):「プルマナックは、2015年の「フランス人が選ぶお気に入りの村」に選ばれました!」

これらが過去5年間に1位を獲得した村々である。ロット県のサン・シル・ラポピー、オー・ラン県のエギスハイム、タルヌ県のコルド・シュル・シエル、モルビアン県のロシュフォール・アン・テール、そしてコート・ダルモール県のプルマナックである。

2015年にチャンピオンに輝いたプルマナックは、現在もこのテレビ番組の恩恵を享受している。1年経った後も訪問客の数は留まることを知らず、この海岸へ訪れる人の数は約40%近くも増加した。この番組の放送以来、ブルターニュ地方の小さな港町であるプルマナックは旅行業者にとっての巡礼地となった。この素晴らしいラベルは、村にとって天からの賜りものだったのだ。

観光客:「まるで絵葉書のようです。テレビ番組を見て、この村を訪れることにしました。」
観光客:「少し遠回りをしなければなりませんでしたが、迷うことなくこの村を見に来ることにしました。」

今年、村の繁忙期である夏には、毎日約20,000以上の人々が人口300人ほどのこの集落を訪れた。

ガイド:「皆さんこんにちは。これから、このサン・ギレック広場を出発して「フランス人が選ぶお気に入りの村」の案内をしたいと思います。」

観光協会が、村を巡る特別のガイドツアーを始めた。

ガイド:「プルマナックは、バラ色の海岸線を象徴するような場所です。本筋からは外れますが、以前はこの村に訪れたバカンス客がこの小路へ向かう際に1番多かった質問はお手洗いがどこにあるかでした。ところが2015年を境に、「テレビ番組で掲げられたプレートはどこですか?」という質問が最も多くなりました。」

アイルランド人のウルシュラさんは、1年半前までプルマナックという村に関して耳にしたこともなかったそう。昨年夏の番組の際にこの村を訪れ、2012年に廃業してしまったこの小さな食料品店を再び営業することを閃いた。この店の開業にあたり、困難は感じなかったという。

ウルシュラさん:「団体の旅行客は「フランス人が選ぶお気に入りの村」というラベルに惹かれてやってきます。当然のように村を訪れる人が増えましたから、このお店にも立ち寄って買い物をしてくれるのです。」

事業を開始した今年度には、ウルシュラさんは村の一般的な食料品店に比べて約2倍以上もの売り上げを見込んでいる。

ウルシュラさん:「今の所は本当に上手く行っています。多くの人に来ていただいて、まさにジャックポットを引き当てたという感じです。」

プルマナックは今まで観光ラベルを得るために立候補をしたことはない。なにより村を横切るメイン通りには、数多くの看板や公告が散乱しており、観光認証を得るための基準を満たしているかは定かではない。しかし、テレビ番組内ではこれらの場所は映されていない。青い海に、バラ色の海岸線と住民のおもてなし。この村は、どうすれば最も効果的に観光ラベルを獲得できるかを問題提起していると言えるだろう。

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「フランスの最も美しい村」協会のパスカル事務局長の現地審査に同行したことがあり、とても興味深くこの動画を拝見させて頂きました。少し長い記事になりましたが、皆様にとって少しでも役に立つ紹介記事になっていれば幸いです。

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