北はベルジュラック(Bergerac)の街、南はヴィルヌーヴ・シュル・ロット(Villeneuve-sur-Lot)の街の間にヴィルレアルの村は位置する。
1265年にアルフォンス・ド・ポワティエ(Alphonse de Poitiers)によって開かれた王族の城塞都市であり、1279年から百年戦争が終結する1453年にかけてイギリス軍の支配下にあった。
市場を中心として活発な商業活動を行うためのアーケード(柱廊)を持つ広場、碁盤の目のように張り巡らされた路地、コロンバージュ(木骨組み)や黄金色の石で出来た民家など、フランス南東部の中世に築かれたバスティード(Bastide)と呼ばれる中世の新しい計画都市の特徴を色濃く留めている。
14世紀に建てられた二階建ての旧市場は強固な木製の柱と重々しい重量感が見事である。市場に送られた穀物の重さを計る公式の建物として用いられ、二階部分は都市役人の部屋として使われた。
旧市場を見守るように尖った屋根に覆われる二つの小塔に飾れらた南仏ゴシック様式のノートル・ダム教会が構えている。要塞化された強固な造りが特徴的で、礼拝の場と有事の避難場所という2つの役割を持って、バスティードが築かれたのと同時期の13世紀に建築が開始された。かつては周囲を堀に囲まれ、中に入るには跳ね橋(pont-levis)を通るしかなかった。
その他村内には、1713年の旧フィーユ・ド・ラ・フォワ修道院(Ancien couvent des Filles de la Foy)が中心の広場に面して建てられている。また、サン・ロッシュ(Saint Roch)通りに残る3階建て民家では、2階部分に15世紀後半に作られた十字型の窓、3階部分には小さな二つの窓が並んでいるのを見ることが出来る。メゾン・ド・バイル(※Maison du bayle: 代官職の家の意)と呼ばれるこの地域に特徴的な造りで、かつて豊かな商人によって建てられたと考えられている。
7月の最終日曜にには、ラ・ボデガ(La Bodéga)と呼ばれるヴィルレアルの村を代表するお祭りが行われる。ライトアップされた旧市場を中心に多くの人が訪れ、野外で音楽や料理を楽しむことが出来る。
また旧市場の残るヴィルレアルの広場で、7月~9月上旬の毎週月曜日夜に開催される生産者市においてピクニック形式での食事や工芸品の販売、音楽や馬車での散歩を楽しむことができる。毎週土曜日の朝に開催される伝統的なマルシェと共に、この村の魅力を味わい尽くすには外すことの出来ない催し物だろう。
数百年間変わらず市場とその広場に人々が集まり、活気に満ちている。そんな人々の楽し気な話声がこの村の歴史を誇らしげに今に伝えている。