陶器の街リモージュのほど近く、丘陵地の岩山に佇むセギュール・ル・シャトーの村は、周囲を取り囲む自然環境が時に敵の移動を阻害する自然の防壁として機能し、また城への侵攻を封鎖する前哨としての役割を演じた。難攻不落の地として知られ、「絶対的に安全な場所(lieu sûr)」という名前で呼ばれるほどだった。
城壁に守られた中心市街地は職人と商人で賑わい、15世紀から18世紀にはリムーザン地方とペリゴー地方の361カ所にも及ぶ領主裁判所の訴訟を担うアポー裁判所(Cour des Appeaux)が置かれたことにより、街の名声は大きく高まった。
建物に付属した小さな塔や、木骨組みのコロンバージュ様式。らせん階段や家の威光を示す巨大な暖炉。見事な彫刻が施された窓を仕切る石材など、今でも村には往時の栄光を示す豪華絢爛な貴族の館が残されている。
小さいながらも堂々とした佇まいのサン・レジェール教会は、19世紀に建設された。現代画家ヴァンサン・コルペ(Vincent Corpet)が手掛けたステンドグラスは、聖レジェールの苦悶を象徴しており、独特の世界観が魅力である。
その他、花崗岩でできた15世紀の館は小さな塔と物見櫓で飾られ見事である。また、見張りのための塔や、サン・ローサンの塔、アンリ4世の家など村内には見どころも多い。
フランス文化省による「注目すべき庭園(Jardin remarquable)」にも登録されている、シェダル農業・自然公園(Parc agricole et paysager du Chédal)にも足を運んでみると良いだろう。不思議な形をした木を組み合わせて作られたバルコニーやネオ・ゴシック様式の塔。幾多の現代彫刻や19世紀の鳥かごなどが設置され、芸術と自然に触れ合うことが出来るので家族皆で楽しめるお勧めのスポットである。
セギュール・ル・シャトーを訪れた際に是非とも味わいたいのが、村の特産品の黒尻豚(Culs noirs)である。かつてリムーザン地方で多く育てられていた黒尻豚だが、工業的な飼育に適した種類の豚にとって代わられ、ほとんど姿を消してしまった。現在は村内の情熱ある養豚家の手によって大切に飼育されており、親戚関係にあるイベリコ豚に似た深い味わいと旨味が楽しめる。
リモージュ子爵出生の地でもあるセギュール・ル・シャトーの村は歴史のどの時代においても常に光り輝き、オーヴゼール川の水の流れに村の誇る強固な城塞を映し出している。