ルー川(Loue)の源流から数キロメートルほど離れた場所に、中世の時代にはワイン醸造と鍛冶屋で栄えたロの村は佇んでいる。村に残る共同洗濯場は、かつての暮らしを今に伝えている。
バロック様式の外観と石灰岩の鐘楼が美しい17世紀のサン・テオドゥール教会(Église Saint-Théodule)は、ブザンソン出身の建築家ジャン=ピエール・ガルゾ(Jean-Pierre Galezot)の手によって建てられた。
13世紀にトレーズ候(Sires de Thoraise)の館として建てられたロの城は、ルー川の往来と塩の交易をコントロールするために、その後領主によって所有されることとなる。フランス革命時に一時差し押さえとなったが、現在はフランシュ―コンテ地方の画家ロジャー・ロイ(Roger Roy)によって所有されている。一般公開はされていないものの、外から強固な城の姿を眺めることが出来る。
現在村内でのブドウ栽培は行われていないが、アーチ状の広いカーヴを備えた、16世紀から17世紀に建てられたブドウ農家の民家が保存されている。また、16世紀の美しい館にはブドウとワインの博物館が備え付けられており、対岸にはかつての鍛冶屋の建物が残されている。これらの歴史的建築物を散策することで、村に繁栄をもたらした産業の足跡を見ることが出来るだろう。
このドゥー県(Doubs)に位置する小さな村は、長い間川の生み出す水力エネルギーを活用してきた。また、静かで清らかなルー川(Loue)では、透き通った流れの中にニジマスが優雅に泳いでいる。ニジマスを使った料理は村の名物となっているので、レストランに入った時にはぜひ味わいたい。
ロの村には、フランシュ・コンテ地方で今なお語り継がれる、大蛇の伝説が残っている。価値を付けることも出来ないような貴重な宝石を額につけるとされ、人々はわがものにしようと必死に探した。この物語は、2010年にこの村を訪れたエドウィン・ベイリ(Edwin Baily)監督にインスピレーションを与え、「大蛇の巣穴(Le Repaire de la vouivre)」としてドラマ化された際には一躍脚光を浴びた。
村に到着するとルー川のせせらぎが奏でる癒しの音が私たちを迎える。対岸からは、古い小さな石橋の先に、茶褐色の屋根が重なり合いながら軒を連ねる民家が水面に反射し、頂上に突き出たとんがり屋根の教会が可愛らしい絵葉書のような光景が広がっている。
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