「閉ざされた」という語源を持つように、世界遺産ドロミテ山群とイザルコ川に挟まれた峡谷の中にキウザの村はひっそりと佇んでいる。
村に入るとまず目に留まるのが、えんじ色のとんがり屋根が特徴的な聖アンドレア教会(chiesa di Sant’Andrea)である。1482年から1498年の後期ゴシック様式で建てられ、南チロルで最も美しい教会と称される。
垂直に隆起した崖の上からザビオナ修道院(Monastero di Sabiona)が、キウザの村を見下ろしている。このベネディクト会修道院はサンタ・クローチェ教会(Chiesa della Santa Croce)など、4つの小教会から構成されており、チロル地方を代表するバロック画家ステファン・ケスラー(Stephan Kessler)による聖母マリアを主題とする9つの絵画が保管されている。サンタ・マリア・デッレ・グラッツィエ小教会(Cappella di santa maria delle grazie)の中には9世紀の洗礼堂があることが考古学的に発見されている。旧市街から歩いて約45分の登り道だが、時間があれば是非とも立ち寄りたい。
この地を訪れたらぜひ味わいたいのが、クネーデル(knödel / canederli)と呼ばれるジャガイモやパンを団子状にして茹でた料理。チロル地方の名物で、もちもちとした触感が特徴的である。
旧市街の中は、カラフルな色合いの家々が立ち並びとっても可愛らしい。チロル地方らしく木材を贅沢に使用した建築も目立ち、村を散策するとまるでおとぎ話の世界に迷い込んだかのようである。
1800年代後半には世界中から芸術家が数多く集まり「芸術の村」として名を馳せた。今日も、イタリアの文化・芸術の中心地のひとつとして多くの訪問客を引き付けている。