大分県のほぼ中央、人気温泉地と知られる湯布院から山を登り、由布岳の北側の高原地帯に塚原の村は長閑に佇む。4世紀頃にはすでにこの場所に集落が存在していたと言われ、「塚」(小高い丘)が散在することが村名の由来となっている。貞治3年(1364)年に始めて文献の中で「塚原」が登場し、江戸時代からは天領として明治まで続いた由緒正しき村である。
村の中央には「むけん山」と呼ばれる丘があり、村の住民で共同保有されている。一般の立入は禁止されているものの村のどこからでも眺めることの出来る象徴的な場所である。
霧島神社は、まろやかで甘みのある名水が湧き出し、週末になると水を汲みに来る人が後を絶たない。そんな神社に400年以上も伝わる伝統行事が「甘酒祭り」である。毎年12月に開催され、新米で甘酒を造り振る舞うことで五穀豊穣を祈る。また最終日には、村内の男衆が女性に対しておもてなしをすることから、別名「かかあ天下祭り」とも呼ばれる。
霧島神社へと続く参道は出店地区と呼ばれ風情ある街並みが残されている。車の場合は遠回りになってしまうが、この道を通じて神社へと辿り着く道のりは趣きがあり、十分歩く価値がある。
村内には日本三大薬湯の一つで源泉かけ流しの塚原温泉があるので、村内を歩き疲れたら立ち寄ると良い。塚原温泉から延びる登山道を進むと噴煙立ち昇る伽藍岳(がらんだけ)の火口を見ることが出来る。また、そこ場所からは辺り一面緑色に輝く塚原の村を眺めることが出来る。
村は観光バスも入れないほど細い道が連なりひっそりとしているのだが、お洒落なペンションやギャラリー、レストランが多く何度も通いたくなるような温かみがある。一度訪れたら、思わずファンになってしなう特別な村である。