ロワール川の畔に佇むラヴァルダン。石灰質の崖の上には強固な城が聳え立ち、中世の趣を残す村を見守っている。
ラヴァルダン城は急峻な地形を利用した難攻不落の城として知られ、獅子心王として恐れられたイングランド王リチャード1世率いる1118年の襲撃にもフランス王の援助を得ながら最後まで抵抗した。ただし16世紀にフランス宗教戦争が勃発し、暴徒化したプロテスタント教徒の隠れ家となったラヴァルダン城は、ナヴァラ王アンリ4世とヴァンドーム候の命によって破壊された。
ロワール川に架けられた8つのアーチを備えたゴシック様式の橋は12世紀終わりから13世紀にかけて建設された。全長は56mにもおよび、水面に反射して映る姿は何とも優美である。また、川沿いにはかつての共同洗濯場も残されており、当時の生活を伺い知ることが出来る。
村の中心に位置するのは、11世紀ロマネスク様式のサン・ジュネスト教会(Église Saint-Genest)。7世紀にクレルモンで司教を務めていた聖ジェネストに捧げられている。外陣と内陣の天井に描かれたキリストの生誕と受難の場面を表した12世紀および16世紀のフレスコ画は、教会の歴史を感じさせる。
村役場の中には村にまつわる資料館が併設されており、村の歴史や城について詳しく知ることが出来る。また、ラヴァルダンにはフランスでも稀な洞窟がいくつも残されており、ドロイド教に特有の生贄の儀式にまつわる伝説が今なお語り継がれている。
村では毎年3月の第一日曜日にシューイン(Chouine)と呼ばれる16世紀発祥のカードゲームの世界大会が開かれている。また、毎年1月にブドウ畑の守護者である聖ヴァンサンを讃える祭が開催され、村には活気が溢れる。
ラヴァルダンを訪れた際には、ロワール渓谷の豊かな景観を楽しむことの出来る散歩道もぜひ歩きたい。2.5kmほどの道のりで1時間程度で一周することが出来、天気の良い日には雄大な自然に触れるのも何とも心地よい。また、道中には崖を掘って作られた穴居式住宅の跡も残されており、かつての住民の営みを想像することが出来る。
街並みは穴居式住宅、ゴシック様式およびルネサンス様式の民家が混在しており、様々な時代を通して暮らしてきた村の歴史の痕跡を見ることが出来る。スタイルは違えど、白壁に木骨組み、褐色の平瓦という共通の特徴を有しており、統一感を感じるユニークな村である。
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