群馬県中之条町の北東部、町のシンボルである嵩山の麓に伊参の村は位置し、傾斜地では棚田なども見られる。1955年に旧伊参村が合併され、現在は中之条町の一部となっている。
伊参の最大の魅力は国の重要文化財にも指定されている冨沢家住宅である。冨沢家は、米作や養蚕農家であったが、麦雑穀や繭等の取引、駄馬による輸送業、金貸しなど幅広い商売で財を築き、この地域における地位を不動なものとした。現存する民家は江戸後期の建築とされ、見事な茅葺の切妻屋根が印象的な入母屋造りが特徴的である。正面の屋根を「兜造り風」に高く切り上げた「平カブト造」は養蚕に適し、2階の白壁とのコントラストで一層際立って見えるように造られている。建物の中では、厩(うまや)が設けられ動物と人間が共存出来るような構造となっている。
伊参の村は14世紀に武士の間で流行した「闘茶」の文化が残る、全国的にも珍しい場所としても知られる。甘茶、渋茶、チンピの3種類の粉の調合を変えることで4種類のお茶を作り、参加者はその茶名を当てる。毎年2月24日には白久保天満宮の宵祭りに行われることから「天神講」とも呼ばれる。また、「上州久保のお茶講」として国の重要無形文化財にも指定されている。
その他、廃坑となった中学校が群馬県人口200万人記念映画「眠る男」の撮影拠点として使用されたことをきっかけに、撮影スタジオ・ロケ隊の合宿所および映画関係の資料の展示を行う「伊参スタジオ」として活用している。秋には「伊参スタジオ映画祭」と称して、中之条町ロケ作品や若手作家の作品が上映されているので興味のある人は訪れてみると良い。また、全国的にも珍しい自治体主導の電力会社「中之条電力」をはじめとして、電力の地産地消に積極的に取り組んでいることでも知られる。
自然に囲まれた村の中で綺麗な空気をいっぱいに感じて歩くのも良いだろう。築130年の古民家で営むうどん屋さん「和利の家」で黒豆と黒米を練りこんだうどん「ゆうめん」を食べれば疲れた体も元気になるだろう。