【伊根町】伊根浦の舟屋群の知られざる秘密

【景観】伊根浦の舟屋群について

2005年7月22日に、伊根浦の舟屋群(正式名称:伊根町伊根浦伝統的建造物群保存地区)は文化庁が登録する重要伝統的建造物群保存地区(※以下「重伝建」という)に登録されました。漁村というカテゴリーで登録されたのは、日本で初めての事例であり、また今日までこのカテゴリーに登録されているのは伊根浦のみとなっています。登録面積約310.2ヘクタールは長野県南木曽町妻籠宿に次いで2番目に広く、登録されている建築物の数も452件(主屋130、舟屋112、土蔵127、その他63、工作物5、環境物件15)と奈良県橿原市今井町に次いで2番目の多さであり、日本でも類を見ないほど大きな規模で昔ながらのまちなみが残されています。

重伝建を形成する最も特徴的な建築物は、「舟屋」と呼ばれる湾から直接自宅の中に船を泊めることの出来る切妻造りの建物です。現在になって2階を住居としても使用することも増えてきましたが、かつては舟屋に人が住むことは珍しく、1階は船のガレージ、2階は物置として使われていました。母屋は道路を挟んで反対側にあり、2棟を対として生活が営まれていたそうです。湾に面した景観に注目が集まる伊根町ですが実は写真のように舟屋と母屋が面する道路も非常に美しいのです!

【景観】舟屋とは何か?

では、なぜ伊根町でこのような他に類を見ないような景観が可能になったのでしょうか?それは、主として以下の3つの点に関係がありそうです。

①伊根湾が漁業を営むための素晴らしい漁場であったため

伊根町は質の良い魚の生産地として多くの人々に認知されており、現在も数多くの漁師がこの伊根町で漁業を営んでいます。その代表的な例が出世魚として有名なブリで、日本三大鰤(ブリ)漁場の一つとしてブランド化され高値で取引されています。その理由の一つとして、集落背後にある森を守るための保全活動があります。「漁師が森を守る」と聞くと違和感を感じる人もいるかもしれませんが、豊富な栄養分を含んだ水が河川から湾へと供給されることで豊かな漁場が維持されるため、古くから集落内の山林が大切に育てられてきました。重伝建にも「魚付林」を含んだ範囲で登録を受けています。

そんな格好の漁場に面する伊根の漁師にとって、舟屋は非常に機能的で効率的なものでした。自宅から海へと直接向かうことが出来ることはもちろん、舟を自宅に引き上げておくことで腐りにくく長く使用できることができ、漁の準備も一箇所で行うことが出来ました。

②「海の玄関」として住民の移動に便利だったため

かつて伊根浦集落は山に囲まれた陸の孤島であり、道路が十分に整備されていませんでした。陸路での移動が困難だったため村民たちにとって、舟での移動は重要な交通手段でした。そんな彼らにとって舟屋は出かけたり、人を迎えたりする海に面した玄関口としての機能も併せ持っていました。

③自然・地理的条件が非常に恵まれていたため

伊根浦湾は日本海から背を向けるように南向きに入り江があり、湾の入り口に聖なる島「青島」が自然の防波堤となっているため、非常に穏やかで潮の干満差が少ない湾として知られています。そうした自然・地理的偶然は、開口部が水と接する舟屋にとって非常に好条件でした。なお、先ほど紹介した「魚付林」同様に「青島」も重伝建の一部をなしています。

唯一無二の独特の景観でありながら、日本人としてどこか懐かしさも感じさせる風景に心に染み入る美しさがあります。

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