褐色の瓦屋根に統一された街並みに特色ある建築物が残るサン・ジャン・ド・コールの村は、ペリゴール・ヴェールの丘の上に佇んでいる。
村の中心にあるサン・ジャン広場には、ペリゴールとリムーザンとの境界を防衛するため、11世紀に建設された砦が築かれていた。百年戦争の際にイギリス軍に侵攻を許し焼き払われてしまったが、ルネサンス様式のエレガントな手すりのついた品位ある階段を共有する二つの翼棟が組み合わされた建物が15世紀と16世紀に建設された。現在もこのマルトニー城(Château de la Marthonie)が威厳溢れる姿で村を見守っている。
また広場には旧市場の建物の奥に、サン・ジャン・バティスト教会(Église Saint-Jean-Baptiste)が構えている。12世紀前後に建立された教会は、ロマネスク様式とビザンティン様式が融合したロマノ・ビザンティン様式(romano-byzantin)が見事である。内部には美しい絵画や、多彩な輝きを放つ石で作られた17世紀の聖母マリア像が飾られている。教会の脇にはゴシック様式の中庭の一部に、ルネサンス様式の回廊が保存された15世紀の小修道院が隣接している。普段は小修道院の中を見ることは出来ないが、毎年9月の第3週の週末に開催されるヨーロッパ文化遺産の日(Journées européennes du patrimoine)には特別に見学が許可されている。
村の外れには、かつて使われていた水車があり、近くには水切りのついた中世の橋がコール川をまたいで架けられている。ゴシック様式らしい石造りの重厚で美しいフォルムのアーチが特徴的で、丸石が敷きつけられた石畳の道を渡るのが楽しい。川辺には緑豊かな風景が広がっていて、天気の良い日にはサンドイッチ片手にピクニックなどをするのもおすすめである。また、夏には涼し気な音を立てて穏やかに流れるコール川に足を踏み入れて、旅の疲れを癒してみても良いだろう。
1982年から毎年5月の第2週末に開催される花のお祭りフローラリ(Floralies)では、ガーデニングの愛好家をはじめ多くの人々が訪れ賑わいを見せる。村内は色とりどりの花々が咲き誇り、まるで絵本の中の世界に入り込んだかのような美しさである。
この村の魅力的な建築物は、不規則に張り巡らされた小路やコロンバージュ(木骨組み)様式が可愛い歴史ある民家と一体となって調和のとれた街並みを奏でている。