フランスのヴァノワーズ国立公園(Parc national de la Vanoise)と、イタリアのグラン・パラディーゾ国立公園(Parco nazionale Gran Paradiso)の雄大な自然に囲まれて、ボンヌヴァル・シュル・アルクの村はオート・モーリエンヌ(Haute Maurienne)の谷底に佇む秘境である。
周囲もアルバロン山(Albaron)、ルヴァンナ山(Levanna)、キアマレッラ山(Ciamarella)の山頂は標高4,000メートルを超え氷河に覆われている。
冬になると村への入口イズラン峠(Col de l’Iseran)へと至る道が閉鎖されてきたために、豊かな自然環境と先人から継承してきた羊飼いやチーズ職人の暮らしを尊重しながら、独自の観光を発展させてきた。現在は、冬はスキー、夏はハイキングやマウンテンバイクなどのアウトドアスポーツが楽しめる、ヴァカンスに人気の場所の一つとなっている。
しかしながら、統一感のあるアルプスの集落景観がこの村最大の魅力となって訪れる人々を楽しませている。トラロンタ(Tralenta)と呼ばれる地区には木のバルコニーで彩られたアルプス風のシャレ(山小屋)が立ち並び、スキーをして楽しむのにもぴったりの場所である。旧市街は高い煙突にローズと呼ばれる板石で屋根葺きされた石造りの民家が立ち並び、村で共同運営されるチーズ屋やノートル・ダム・ド・ラサンプション教会(Église Notre-Dame-de-l’Assomption)を取り囲んでいる。
またチーズ屋に併設された、山と雪の資料館(Musée « Espace naige et montagne »)では、地元の日常の暮らしや伝統品、冬のスポーツなどの展示が行われているので見てみると良い。
ボンヌヴァル・シュル・アルクは、ソーセージや塩漬け肉などのシャルキュトリーや、ボーフォールやブルー・ド・ボンヌヴァルなどの山のチーズなども有名。せっかくこの村に来たのならばアルプスの食材も味わい尽くしたい。
中心地から数キロほど離れた場所には、12世紀の礼拝堂を取り囲むエコ(Écot)と呼ばれる小さな集落が残されている。標高は2030メートルにも及び、ボンヌヴァルの伝統的な建築が完璧な状態で残っているので、ぜひとも立ち寄りたい。
冬には辺り一面が銀世界に煌めき、夏には雪解け水が騒々しい物音と共に滝のように流れ出し生命が鼓動をはじめる。ボンヌヴァル・シュル・アルクは、自然が生み出すアルプスのリズムに従って、昔から変わらぬ時を刻む秘境の村である。