ガロンヌ川(Garonne)沿いの岸壁の上にオーヴィラールの村は佇む。宗教と商業という二つの力が村の発展の原動力となった。
ル・ピュイ=アン=ヴレ(Le Puy-en-Velay)とスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラを結ぶ巡礼路ル・ピュイの道(voie Podiensis)の宿場町の一つとして栄えた。旧市街の外には、かつてモアサック(Moissac)修道院付属のベネディクト会小修道院としても使われていた、サン・ピエール教会(Église Saint-Pierre)が建っている。12世紀~14世紀にかけて建設されたと言われており、モントバン司教区(diocèse de Montauban)で最も美しいと言われるほど優美である。
また、水上運送交通の拠点であったため、港にはサント・カトリーヌ礼拝堂(Chapelle Sainte-Cathorine)が建ち、往来する船乗りたちを見護っている。
オーヴィラールの一番の見どころはフランス南西部で唯一の円形市場である。街が一番繁栄した1824年に建てられたもので、円を描くように取り囲む列柱と中央の建物からなっている。内部には、石と金属で出来た穀物用の秤が残されており、この地域で作られた穀類の重要な市場となっていたことを物語っている。
円形市場を飾るように取り囲む中世の三角形の広場は、この地方に特徴的なアーチ状に支えられたアーケードとなっている。その上には木材や石灰岩の枠にバラ色の煉瓦で造られた15~18世紀の美しい家々が残されている。
また、ナヴァラ王国(Navarre)の勢力圏にあったオーヴィラールの村は、ガロンヌ川に常に目を配らせる防衛の拠点だった。旧市街は城壁に囲まれ、重要な軍事拠点として要塞化されていたことがわかる。とりわけ17世紀に建てられた時計塔はぜひ訪れたい。石や煉瓦で造られており、1階にあるアーチ状の立派な城門と、上階に取り付けられたアーチ状の窓が美しいハーモニーを奏でている。
ガロンヌ川が作り出す平野部は焼き物に最適な粘土と泥灰岩がよく産出され、ガロ・ロマンの時代からこの村で陶器が生産がなされていた。赤や青で素朴な花々が描かれるオーヴィラール焼(Faïences auvillaraises)は、とりわけ18~19世紀に最盛期を迎えた。興味のある方は、オーヴィラール陶器博物館に当時のオーヴィラール焼のコレクションがあるので訪れてみると良いだろう。
10月第2週目の週末には、円形市場のある広場で陶器市(Marché potier)が開催され、多くの人でにぎわいを見せる。広場に人が集まる村人の生活は、昔から変わることなくこの村に息づいている。