ニーム北方の町ユゼス(Uzès)からさらに北へ進んだ場所、雄大なセヴェンヌ山脈(Cévennes)やヴァントゥー山(mont Ventoux)に抱かれながら、リュッサンの村は石灰質の荒れ地に浮かぶ岩の台地の上に佇んでいる。
12世紀に建てられた最初の城は僅かな跡が残されているにすぎないが、建設された15世紀に建設された城はほぼ完全な形で村の中央に構えている。4つの円形の塔が誇り高くそびえたち、それらのなかでも鐘楼の内部では素晴らしい絵が描かれた天井を見ることが出来る。現在この城は村役場として使われ、多くの人々を迎え入れている。
また、16世紀に建てられたファン城はルネサンス様式の美しい城である。後に1947年にノーベル文学賞を受賞したアンドレ・ジッドや経済学者のシャルル・ジッドを輩出する、ジッド家に所有されていた。現在内部を見ることは出来ないが、名前の由来になったガロ=ロマン期に建てられた礼拝堂に祀られていたニンフの彫像は市役所のホールで見ることが出来る。
村内にはカトリックとプロテスタントの2つの宗派の教会が併存しており、宗教的に平穏な共存関係にあったことを伺うことが出来る。
また、リュッサンの村は19世紀に絹の生産の中心地として栄えた。村内には桑が多く植えられているのはそのためであり、緩やかなカーブが美しいかつての紡績場フィアチュール・ル(Fiature Roux)も覗いてみると良いだろう。
日本の「庭木(Niwaki)」の技法からインスピレーションを受けたジャルダン・デ・ビュイ(Jardin des Buis)では、ツゲや地中海特有の木々が植えら村民の憩いの場となっている。歩き疲れたらこの場所で一休みするのも良いだろう。
村の外には、コンクリューズ(Concluses)と呼ばれるセーズ川(Céze)の支流エギヨン川(Aiguillon)の流れによってえぐられた巨大な峡谷があるので、時間があればぜひ足を延ばしたい。川の水位が下がる夏には歩いて散策することが可能である。道沿いには、ピエール・プランテ(Pierre Plantée)と呼ばれる巨石があり、先史時代にこの場所にすでに人間が住んでいた過去を物語っている。
2つの城と村を取り囲む環状の城壁。狭い小路に沿って建てられる密集した住居の軒先は半円筒状の瓦の装飾ジェノワーズ(Génoises)があしらわれ、日中の鋭い太陽の日差しを避けるために白い石で家々が建てられている。村内を歩けばラングドック地方の中世から続く歴史を叙事詩のように語りかけてくる。