伊豆半島の西側の先端に位置する松崎町は急峻な山々と駿河湾に囲まれながら静かにたたずむ。町内には温泉も多く、ゆっくりとした時間を過ごすことが出来る。
街の中心部には、なまこ壁の建築物が立ち並び町内に約190棟が保存されている。壁面に平瓦を並べて貼り、瓦の目地に漆喰をかまぼこ型に盛り上げて塗る建築様式で、防火・保湿・保温に優れるという特徴を持から江戸時代に普及した。明治43年に建てられた「伊豆文邸(いずぶんてい)」では、かつての生活の面影を保存・整備すると同時に無料休憩所としても解放しているので、ぜひ立ち寄りたい。
松崎出身の左官の名人、入江長八は漆喰とコテで絵を描く独自の芸術を完成させた。江戸で仕上げた作品のほとんどが震災・戦火で消失してしまったが、町内にある「伊豆の長八美術館」では残されたコレクション約50点を展示・紹介している。
石部の棚田は一時耕作放棄地となっていたが、2000年から地域集落活性化の拠点として棚田の復元・保全活動が進められた結果、現在では約370枚、4.2haの石積みの棚田が広がっている。農道・水車小屋・休憩施設も整備され、眼下に駿河湾を一望でき、晴れた日には富士山・南アルプスを望むことができる村を代表する絶景スポットとなっている。
街にある菓子店では個性の異なる桜餅を販売しており、食べ比べをするのも楽しい。というのも、松崎町の塩漬けのさくら葉の生産・出荷量は国内需要の7割を占めている。また、川のりも香りと風味の良さからこの土地の特産となっている。
「世界でいちばん富士山がきれいに見える町」を宣言する村なだけあり、独特な地形と海がコントラストとなって引き立てる富士の絶景は、「これぞ日本」といった景観である。