蛇行して流れるロット川(Lot)沿いにそびえ立つ高い崖を背景に、サン・シル・ラポピーの村は急斜面に這うように佇んでいる。その立地の戦略的重要性から、サン・シル・ラポピーの村は絶え間ない争いの対象となった歴史を持つ。
かつては、多くの船舶で賑わいを見せたロット川の渓谷を監視するため、ガロ・ロマン期にはすでにこの場所は多くの人々の関心を集め、中世には権力を分かつ4つの名家(※カルダイヤック家(Cardaillac)、カステルノー家(Castelnau)、グルドン家(Gourdon)、ラポピー家(Lapopie))による城が建設され、村は城塞化された。百年戦争の時代には、フランスとイギリスの間でこの地の激しい争奪が繰り広げられた。
16世紀の終わりにはカルヴァン派プロテスタントのユグノーによって2度この村が支配されたこともあり、ルイ4世やシャルル8世の提言に従いアンリ4世は街を完全に破壊した。その際に城のほとんどは失われたが、ロカマドゥールの門(Porte de Rocamadour)だけは残された。
こうした多くの災難を経たサン・シル・ラポピーの村だったが、特徴的な建築に周囲の風景が調和する美しい村は保たれ、シュルレアリスムの父としても知られるアンドレ・ブルトン(André Breton)をはじめとして、多くの芸術家や作家がこの地に惹きつけられた。
ロット川流域には世界一高い香辛料として知られる「サフラン」を取ることもでき、村内には専門店もあるので覗いてみると良い。またケルシー特産のトリュフもこの村の名産の一つである。こうした食材で風味付けられた料理を、マルベック種主体の重厚なカオールの赤ワインと合わせて味わいたい。
その他にもサン・シル・ラポピーの典型的な民家の中に造られたリニョル博物館(Musée Rignault)では、近代芸術の展示などが行われているので時間があれば立ち寄ってみると良いだろう。
近年では、2012年にフランスのテレビ番組「フランス人が選ぶお気に入りの村(le village préféré des français)」において1位を獲得するなどフランス国内においても非常に人気の高い村の一つである。
山頂にそびえ立つ要塞化された教会からは、褐色の屋根をかぶった民家が建ち並ぶ統一感のある街並みが広がり、その周囲をコッス・デュ・ケルシー自然公園(Parc naturel régional des Causses du Quercy)の豊かな自然が取り囲んでいる。細い小道沿いには13世紀~15世紀の館などが建ち並んでおり、歩を進めるごとに絵葉書のような美しい姿を覗かせてくれる村である。
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