ディナン／Dinan

【河川貿易で栄えた趣溢れる城下街】

物語の世界に迷い込んだかのような木組みの民家が建ち並ぶ石畳の坂道を下ると、情緒あるランス川沿いの旧港が出迎える。

城壁に囲まれた旧市街で最も見晴らしの良い場所に佇むのは、ブルターニュ公の命により築かれた強固な城。

街中は一年を通じて多くの人々で賑わいをみせ、中世から変わらぬ活気に包まれている。

1380年にブルターニュ公、ジャン４世の命によって築かれたディナン城。

街に残る10個の塔に4つの城門、そして全長2,6kmにも及ぶ城壁は軍事都市だった時代の栄光を今に伝えている。

なかでも威厳溢れる姿で佇むディナン城の主塔は高さ45mにも及び、現在でもこの街の象徴として親しまれている。

すぐ脇に佇むコエトカンの塔は15世紀終わりにブルターニュ公、フランソワ２世によって建てられたもの。

16世紀終わりに勃発した宗教戦争に際に、大砲による砲撃に備えてより強固に改築された、

現在は中世の軍事技術を展示するための博物館として利用されている他、屋上からは統一感のあるディナンの街並みを望むことの出来る人気のスポットとなっている。

サン・マロやイギリス海峡へと流れ込むランス川の最上流部に位置するこの街は、中世に貿易港として栄えた。

とりわけ18世紀に船舶用の帆に用いるための機織り工がこの街に暮らすようになったことに伴い、織物輸出のための港として大きな富がもたらされた。

ランス川に架けられているヴィウ・ポンは、フランス語で「古い橋」という意味を持ち1070年にその歴史を遡る。

中央部が大きく開けた形になっているのが特徴で、小型船が通り抜けられるようになっている。

またランス川に沿ってカフェやレストランが建ち並び、穏やかな流れを眺めながら食事を楽しむことが出来る。

まるで絵本の世界に迷い込んだかのような木組みの民家が、約120棟近く点在する街並み。

とりわけ特徴的なのは歩行者のアーケードとなるよう2階部分がせり出している「メゾン・ア・ポルシュ」と呼ばれる建築で、ブルターニュ地方に多い雨の日でも商売が出来るような構造となっている。

お洒落なギャラリーやブティックが建ち並ぶジュルジュアル通りから、石畳の緩やかな坂道が続くプチ・フォール通りを経てランス港へと至る道は、木組みの民家が特に多く絵葉書のような街並みが続く。

道中にあるメゾン・ド・グーヴェルヌールは15世紀に建てられ、この街で最も古い木骨組み建築として知られる。

この街の歴史地区で一際目を惹くのが、15世紀終わりにこの街の有力中産階級によって建てられたのが時計塔。

キリスト教会やブルターニュ公と拮抗する市民の象徴として、常にディナン市民の暮らしを見守ってきた。

1498年に近郊の街ナントで製造された機械仕掛けの時計が据えられており、ヨーロッパで最も古い機械時計の1つとして知られている。

また高さ47mにも及ぶ時計塔の上へ登る事も可能で、深い藍色の屋根に統一されたこの街を一望することが出来る。

街の中心に佇むのは、11世紀に設立された歴史あるサン・マロ教会。

元々は城壁の外に位置していたが、15世紀に現在の場所に移設された。

ブルターニュ地方におけるフランボワイヤン・ゴシック様式の代表的な建築として知られる。

教会内に足を踏み入れると目を奪われるのが、カラーリングが見事なパイプオルガン。

英国の名工アルフレッド・オルドノウによって1889年に作られた。

また20世紀初めに制作された美しいステンドグラスも、その卓越した芸術性から高い評判を得ている。

この街の歴史地区でサン・マロ教会と並び宗教的な象徴となっているのが、12世紀に建設が始まったサン・ソヴール大聖堂である。

時代に応じて改増築が繰り返された建物は、ロマネスク様式、ゴシック様式、クラシック様式、バロック様式など多様なスタイルが混ざり合い、見事なまでに調和している。

教会の正面扉は12世紀の最も古い時代の面影が残り、ロマネスク様式の見事な造りが楽しめる。

18世紀に作られた黄金色に輝く祭壇は、天使の彫像が据えられた天蓋の下で神聖な雰囲気に包まれている。

また鷲とペリカンを象った18世紀の譜面台も見逃せない。