エペルネ／Épernay

【シャンパーニュワインの都】

世界中のハレの日に彩りを添える泡のワインが、迷路のように複雑に入り組んだ地下のワイン貯蔵庫に眠るこの街。

石畳が彩る訪問者を迎えるための豪華な前庭、手の込んだ細工が施された建物、安らぎをもたらす緑の庭園。

シャンパンの製造・販売へ捧げられた情熱の全てが、シャンパーニュ大通りに集約されている。

中心市街地を1km程横断するシャンパーニュ大通りは、この街を象徴する場所。

「ドン・ペリニヨン」などで知られる1743年創業の老舗「モエ・エ・シャンドン」社をはじめ、1811年創業の「ペリエ・ジュエ」社、1849年創業の「ポル・ロジェ」社、1858年創業の「メルシエ」社など有名なシャンパン製造業者のメゾン（館）が建ち並ぶ。

豪華絢爛な美しい館が建ち並ぶこの通りは、シャンパン製造と共に歩んだ華やかな歴史を語り続けている。

こうした重要性が認められ、2015年からは「シャンパーニュの丘陵、メゾンとカーヴ」の一部としてもユネスコの世界遺産に登録されている。

シャンパーニュ大通りに面して佇むペリエ城は、「ペリエ・ジュエ」社創業者の息子であるシャルル・ペリエの邸宅として建てられ1857年に完成した。

2度の大戦中にペリエ城は、軍病院やイギリス空軍の軍事的な施設として用いられていた時代もあった。

エペルネ博物館の歴史は1893年に遡ることができ、1950年にペリエ城に移転してきた。

当時はエペルネ市の図書館が併設されていたが、博物館のリニューアルに伴う改装工事前の1995年に別の場所へと移り、2021年より「シャンパーニュワインと地域考古学博物館」としてより充実した展示を行っている。

この街のランドマークとして知られるのが、1904年に完成したド・カステラーヌの塔。

1895年に設立されたシャンパンメーカー「ド・カステラーヌ」のメゾンの一部であり、パリ・リヨン駅を設計したマリウス・トゥドワールによって建てられた。

シャンパンを試飲しながらのガイドツアーに参加すれば、高さ66mに及ぶ塔の上へと登ることが出来る。

また上空に浮かぶ気球も、シャンパンワインと深い関わりを持っている。

1900年のパリ万博の際に「メルシエ」の創業者が、地上とロープでつながれた気球を用いてシャンパンのプロモーションを行ったことにその歴史を遡る。

現在はこの街の名物となっており、地上150mの上空でシャンパンを飲みながらブドウ畑に囲まれたこの街を一望することが出来る。

この街とシャンパンの歴史を語る上で欠かすことの出来ないのは、同じく世界遺産を構成しているシャンパーニュ通りのカーヴ（地下貯蔵庫）である。

一年を通じて涼しい石灰岩の地層を掘って作られた広大かつ複雑な地下空間に、2億本にも及ぶシャンパンが眠っていると言われている。

各メゾンのセラーは、ガイドツアーを通じて見学することが出来る。

その中でも特に人気があるのは、ドン・ペリニョンのブランドを最初に保有していたことで知られる「メルシエ」社のカーヴ。

全長18kmにも及ぶ地下道を、トロッコ電車に乗って巡れるようになっている。

世界遺産「シャンパーニュの丘陵、メゾンとカーヴ」を構成する、この街の最後の文化財はフォール・シャブロルの名で呼ばれるワインの研究施設である。

1999年に広大なブドウ畑を有する、「モエ・エ・シャンドン」社の実践学校および農業試験場として作られた。

最大の功績は19世紀後半に、ヨーロッパ中のブドウ産業に甚大な被害をもたらしたフィロキセラへの対策を生み出したことにある。

アメリカ産のブドウの樹にヨーロッパ原産の品種を接ぎ木するという方法を確立すると共に、シャンパーニュ地方のブドウ農家にこの新しい技術を普及させる支援を行った。