長野県南部、上伊那地域のほぼ中央に中川村は佇んでいる。村の名前は、合併前の旧南向村と旧片桐村を隔てていた天竜川が古くは「天の中川」と呼ばれていたことに由来している。
村内には茅葺屋根の民家が残されており、古き良き日本の里山景観に日本人なら誰もが懐かしさを覚えるだろう。春には桜やツツジ、秋にはイチョウ並木と四季を感じる趣ある風景が私たちを出迎えてくれる。
村の北東にある陣馬型山からは、中川村のある伊那盆地を見渡すことの出来る絶景が広がってるので是非とも足を運んでみると良い。戦国時代には、武田信玄の狼煙台として軍事的な情報伝達の要地であったことも知れらている。
中川村の特産品は野菜や果物など多岐にわたるが、なかでも日本ミツバチから作られた蜂蜜は欠かすことの出来ない逸品である。明治以降セイヨウミツバチの養蜂家が増えたなかで、日本在来種である日本ミツバチの保護と普及のために尽力する富永朝和さんの努力の甲斐もあり、中川村はハチミツの里としても知られている。濃厚で深みのある味が特徴の蜂蜜を、是非とも味わいたい。
その他、村内に点在するおしゃれなカフェでゆっくりとした時間を過ごすのも良いだろう。風に揺らめく木々が奏でるメロディーに、訪れる野鳥のさえずりの歌がBGMとなり、極上の癒し空間を演出してくれる。地元で採れた野菜や果物にこだわった自慢の料理も、ここでしか味わえない特別な一品ばかりである。
中川村は感受性を豊かにするにも最適な村の一つである。アンフォルメル中川村美術館では、写実主義や幾何学主義へのアンチテーゼとして、人間の存在そのものを問い直すアンフォルメル(不定形)と呼ばれる芸術作品を展示している。また、中川文化センターやNVサウンドホールでは一年を通して劇やコンサートといった文化イベントが開催されている。
現在は中川村の農業生活を体験できるファームサポートという仕組みが整備され、観光とは異なる新しい滞在の形も提案されている。穏やかで優しい時間が流れる中川村で第2の故郷として暮らしてみれば、この村の持つ飾らない日常に魅了されるだろう。